退職金の税金は、こう決まる
退職金は、長年の勤務に対する報酬をまとめて受け取るものなので、給与とは別扱いで 税負担が軽くなるように作られています。その仕組みを、国税庁と東京都主税局の 公式ページの記載にそって順に見ていきます(2026年8月18日に本文を取得して確認)。
全体の流れ
勤続30年の人が退職金2,000万円を受け取る場合を例に、5つの段階をたどります。
- 1
勤続年数を数える(1年未満は切り上げ)
勤続30年 → A = 30年
- 2
退職所得控除額を出す
800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 15,000,000円
- 3
課税退職所得金額を出す
(2,000万円 − 15,000,000円)× 1/2 = 2,500,000円(1,000円未満切捨)
- 4
所得税+復興特別所得税を出す
(2,500,000円 × 10% − 97,500円)× 102.1% = 155,702円(円未満切捨)
- 5
住民税を出して、退職金から引く
2,500,000円 × 6% = 150,000円/× 4% = 100,000円 → 合計 250,000円
手取り = 2,000万円 − 155,702円 − 250,000円 = 19,594,298円
2,000万円のうち引かれたのは 405,702円。実効税率は約2.0%です。同じ2,000万円を給与として受け取った場合と 比べると、負担は桁違いに軽くなります。
1. 勤続年数の数え方
退職金の計算に使う勤続年数は、原則としてその会社に勤めた期間です。1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年に切り上げます。 国税庁 No.1420 は「勤続年数が10年2か月の人の場合の退職所得控除額」の例で、 「勤続年数は11年になります(端数の2か月は1年に切上げ)」と明記しています。
この切り上げがあるため、退職日が1日ずれるだけで控除額が変わることがあります。勤続20年ちょうどなら控除額800万円ですが、20年と1日なら21年扱いで 870万円です。差は70万円で、課税退職所得金額にすると35万円の差になります。
なお、長期の欠勤や休職の期間も勤続期間に含めるのが原則です。一方、日額表丙欄の 適用を受けていた期間などは勤続期間から除かれます(国税庁 No.2732)。
2. 退職所得控除額
勤続年数が長いほど大きくなります。20年を境に、1年あたりの単価が40万円から70万円へ 上がるのが特徴です。
| 勤続年数(A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(80万円に満たない場合には80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A − 20年) |
障害退職の加算:障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上の式で計算した額に100万円が加算されます。
3. 課税退職所得金額 — 3つの区分
控除額を引いたあと、原則は2分の1にします。ただし勤続年数が5年以下の場合は、 この2分の1計算に制限がかかります。
| 区分 | 誰が当てはまるか | 課税退職所得金額 |
|---|---|---|
| 一般退職手当等 | 短期退職手当等にも特定役員退職手当等にも当たらないもの。 勤続5年を超える一般の従業員はこれ。 | (収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 |
| 短期退職手当等 | 役員等以外の者としての勤続年数が5年以下の場合(令和4年1月1日以後に 支払うべき退職手当等から適用)。 | 控除後が300万円以下:(収入金額 − 控除額)× 1/2 控除後が300万円超:150万円 + {収入金額 −(300万円 + 控除額)} |
| 特定役員退職手当等 | 役員等としての勤続年数(役員等勤続年数)が5年以下である人が、 その期間に対応して受け取る退職手当等。 | 収入金額 − 退職所得控除額(1/2計算の適用なし) |
「役員等」とは、法人の取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人および これら以外で法人の経営に従事している一定の者、国会議員および地方公共団体の議会の 議員、国家公務員および地方公務員をいいます(国税庁 No.1420)。
課税退職所得金額に1,000円未満の端数があるときは切り捨てます(国税庁 No.2732)。
4. 所得税と復興特別所得税
退職所得は他の所得と分離して計算します。課税退職所得金額を所得税の速算表に あてはめ、出た税額に102.1%を掛けたものが源泉徴収される額です。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
復興特別所得税は、原則としてその年分の基準所得税額の2.1%です。平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に支払を受ける退職手当等に適用されます(国税庁 No.2260)。 当サイトは所得税額に102.1%を掛け、円未満を切り捨てて表示しています。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、この計算を使わず、 退職手当等の支給額に20.42%を 掛けた額が源泉徴収されます。受給者本人が確定申告を行うことで精算します(詳しくはこちら)。
5. 住民税
退職所得は他の所得と分離して課税され、通常、退職金の支払を受けるときに、所得税・復興特別所得税とともに個人住民税が 特別徴収されます(東京都主税局)。翌年に納付書が届くのではなく、振込額からすでに引かれています。
税率は所得割の標準税率で、市区町村民税6% + 道府県民税4%の合計10%です。当サイトは それぞれを課税退職所得金額に掛けたうえで100円未満を切り捨てて合計しています。
なお、退職所得に係る個人住民税の10%税額控除は、平成25年1月1日以降に支払われるべき退職手当等から廃止された(東京都主税局)。 古い解説記事には10%控除が残っているものがあるので注意してください。
当サイトが対象外としている条件
次のケースは計算方法が変わるため、当サイトのシミュレーターでは扱っていません。 該当する可能性がある方は、勤務先の担当部署または所轄の税務署にご確認ください。
- 同じ年に2つ以上の退職手当等・一時金を受け取る場合(重複判定ツールは「今年1件+前に1件」の2件までを扱う)
- 前の勤務先の勤続期間を今回の退職金の計算に通算している場合の重複控除(所得税法施行令第70条第1項第1号。年数の制限がなく、勤務先の退職金規程によるため)
- 同一年中に2か所以上から退職手当等を受け取る場合
- 同じ年に一般退職手当等・短期退職手当等・特定役員退職手当等が2種類以上ある場合
- 確定給付企業年金で従業員自身が負担した保険料・掛金がある場合の収入金額からの控除
- 退職金を年金形式で受け取る場合(雑所得として総合課税)
出典
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得) / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 退職所得の計算式 / 退職所得控除額の表 / 特定役員退職手当等 / 短期退職手当等 / 障害退職の100万円加算 / 申告書未提出時の20.42%
- 国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収 / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 勤続年数の数え方 / 課税退職所得金額の区分別算式 / 短期退職手当等の300万円基準 / 課税退職所得金額の1,000円未満切捨 / 重複期間がある場合の控除(イ=4年内/ロ=9年内・令和8年1月1日以後のDC一時金/ハ=19年内) / 前の退職手当等が少額の場合の期間圧縮の算式 / 減額後が80万円未満なら80万円・障害退職はそこに100万円加算
- 国税庁 No.2260 所得税の税率 / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 所得税の速算表(7段階) / 復興特別所得税2.1%
- 所得税法 第30条(退職所得) / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 退職所得控除額(第3項) / 前年以前に他の退職手当等がある場合の控除減額(第6項第1号) / 80万円の下限(第6項第2号) / 障害退職の100万円加算(第6項第3号) / 短期退職手当等・特定役員退職手当等の定義
- 所得税法施行令 第69条(退職所得控除額に係る勤続年数の計算) / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 勤続期間による勤続年数の計算 / 1年未満の端数は1年に切上げ(第2項) / 確定拠出年金の企業型年金加入者期間・個人型年金加入者期間の合算(第1項第2号) / その年に2以上の受け取りがある場合(第1項第3号)
- 所得税法施行令 第70条(退職所得控除額の計算の特例) / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 重複期間の控除(第1項第2号) / 前年以前4年内(イ) / 前年以前9年内・令和8年1月1日以後のDC一時金(ロ) / 前年以前19年内(ハ) / 前の退職手当等が控除額に満たない場合の期間圧縮(第2項) / 重複期間の1年未満切捨て(第3項)
- 所得税法施行令 第72条(退職手当等とみなす一時金) / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 第3項第七号=確定拠出年金法の企業型年金規約・個人型年金規約に基づく老齢給付金として支給される一時金 / 小規模企業共済の共済金(第3項第三号) / 中小企業退職金共済の退職金(第3項第二号)
- 東京都主税局 個人住民税「11 退職金にかかる住民税」 / 2026年8月18日確認(HTTP 200)収録: 退職所得の住民税は分離課税 / 所得割の税率(区市町村民税6%・都民税4%) / 10%税額控除の廃止 / 退職所得控除額の表
所得税の速算表は「令和7年4月1日現在法令等」の版です。当サイトは税務相談を行うものでは ありません。個別の判断が必要なときは 所轄の税務署 または税理士にご相談ください。