退職所得控除の重複・受け取り順番のよくある質問
退職金と確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)を両方受け取る人からよく出る疑問を、 所得税法・同施行令の条文と国税庁タックスアンサーを根拠にまとめました (2026年8月18日に本文を取得して確認)。
退職金とiDeCoの一時金を両方受け取ると、退職所得控除は減りますか?
受け取る年が近く、勤続期間と加入者期間が重なっている場合は減ります。退職所得控除は「今回の勤続年数で計算した額」から「前の受け取りと重なっている期間の年数で計算した額」を差し引いた残りになります(所得税法施行令第70条第1項第2号)。逆に言えば、期間がまったく重なっていなければ、続けて受け取っても控除は減りません。減るのは重なっている部分の期間の分だけで、控除が全部消えるわけではありません。重なっている期間に1年未満の端数があるときは切り捨てます(同条第3項)。
iDeCoは「5年空ければいい」と聞きましたが、今もそうですか?
確定拠出年金の一時金を先に受け取って、あとから会社の退職金を受け取る場合については、令和8年1月1日以後に支払を受けた一時金から「10年」に変わりました。所得税法施行令第70条第1項第2号ロは、令和8年1月1日以後に支払を受けた確定拠出年金の老齢一時金について「前年以前九年内」と定めています。前年以前9年内に入らないようにするには10年以上あけることになるため、実務では「10年ルール」と呼ばれます。「5年空ければよい」という説明は、同日より前に支払を受けた一時金についての「前年以前四年内」(同号イ)を指したものです。今は2026年で、この改正はすでに施行されています。
結局、何年あければ控除が減らないのですか?
受け取る順番によって違います。①会社の退職金を受け取ったあと、また会社の退職金を受け取る場合は「前年以前4年内」が対象なので、5年以上あける必要があります(施行令70条1項2号イ)。②令和8年1月1日以後に確定拠出年金の一時金を受け取り、そのあと会社の退職金を受け取る場合は「前年以前9年内」なので、10年以上です(同号ロ)。③会社の退職金を受け取ったあとに確定拠出年金の一時金を受け取る場合は「前年以前19年内」なので、20年以上です(同号ハ)。同じ2つのお金でも、どちらを先にするかで必要な間隔が10年と20年に分かれます。
なぜ退職金が先だと19年、確定拠出年金が先だと9年なのですか?
条文がその順番ごとに別の号を立てているためです。施行令70条1項2号ハは「その年の前年以前十九年内に退職手当等の支払を受け、かつ、その年に第七十二条第三項第七号に掲げる一時金の支払を受けた場合」と定めており、今年 確定拠出年金の一時金を受け取る人が19年さかのぼります。一方、同号ロは今年 会社の退職金を受け取る人について9年さかのぼると定めています。当サイトはこの条文の区分をそのまま判定に使っています。なお、なぜこの年数差があるのかという立法の理由については、当サイトでは説明していません。
企業型DCとiDeCoで、扱いは違いますか?
退職所得控除の重複判定については同じ扱いです。施行令第72条第3項第七号は「確定拠出年金法第四条第三項に規定する企業型年金規約又は同法第五十六条第三項に規定する個人型年金規約に基づいて…老齢給付金として支給される一時金」と定めており、企業型DCとiDeCo(個人型)の両方がここに含まれます。加入者期間についても、施行令第69条第1項第2号が、企業型年金加入者期間と、それと重複していない個人型年金加入者期間を合算した期間を使うと定めています。企業型DCからiDeCoへ移換した人は、その両方の期間を通した期間で判定することになります。
確定拠出年金の「加入者期間」は、いつからいつまでですか?
一時金の支払額の計算の基礎になった加入者期間です。施行令第69条第1項第2号は、企業型年金加入者期間について「事業主掛金に係る当該企業型年金加入者期間に限る」、個人型年金加入者期間について「個人型年金加入者掛金に係る当該個人型年金加入者期間に限る」としています。つまり掛金を納付していた期間が基礎になり、掛金を出さずに運用だけしていた期間(運用指図者の期間)はここに含まれません。実際の期間は、運営管理機関から届く記録のお知らせや、給付の請求手続きで示される書類で確認してください。当サイトのツールは、あなたが入力した期間をそのまま使います。
前の退職金がとても少なかった場合も、期間まるごと重複になりますか?
なりません。前に受け取った額が、その勤続年数で計算した退職所得控除額に満たない場合は、前の勤続期間を短く見なして重複を計算します(施行令第70条第2項)。短く見なす年数は、前の収入金額が800万円以下なら「収入金額 ÷ 40万円」、800万円を超えるなら「(収入金額 − 800万円)÷ 70万円 + 20」で計算し、1未満の端数は切り捨てます。たとえば勤続20年で退職金300万円だった人は、300万円 ÷ 40万円 = 7.5 → 7年分だけが重複の対象になります。前の退職金が少なかった人ほど、重複とみなされる期間が短くなる仕組みです。
重複で控除が0円になってしまうことはありますか?
0円にはなりません。減額したあとの退職所得控除額が80万円に満たない場合は80万円になります(所得税法第30条第6項第2号)。さらに、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、その80万円の下支えを当てたあとの金額に100万円が加算されます(同項第3号)。ただし80万円まで下がると、退職金のほとんどが課税の対象になります。当サイトのツールは、この下限が効いた場合に画面上でその旨を表示します。
同じ年に退職金と確定拠出年金の一時金を両方受け取ったらどうなりますか?
ここで説明している規定とは別の規定が適用されます。施行令第70条第1項第2号は「その年の前年以前に支払を受けた退職手当等」との重複を扱うもので、同じ年に2つ以上を受け取る場合は施行令第69条第1項第3号(その年に2以上の退職手当等または退職一時金等の支給を受ける場合は、最も長い期間で勤続年数を計算し、重複していない期間を加算する)によります。計算の組み立てが変わるため、当サイトのツールでは扱っていません。該当する場合は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
転職して前の会社からも退職金をもらいました。これも対象ですか?
前年以前4年内に受け取っていて、勤続期間が重なっている場合は対象です(施行令70条1項2号イ)。ただし、前の勤務先の勤続期間を今回の退職金の計算にそのまま通算している場合は、年数の制限がない別の規定(同項第1号)が適用されます。この場合は前に受け取った退職金の全体が控除の計算に影響し、「4年内」という枠がありません。どちらに当たるかは勤務先の退職金規程の定め方によるため、当サイトのツールは第1号の場合を扱っていません。勤務先の担当部署にご確認ください。
iDeCoを一時金ではなく年金で受け取れば、重複の問題はなくなりますか?
退職所得控除の重複という問題自体は生じません。年金の形で受け取ると退職所得ではなく雑所得(公的年金等)になり、退職所得控除ではなく公的年金等控除の対象になるためです。ただし雑所得は他の所得と合算して総合課税されるので、その年の他の収入によっては税負担が重くなることがあり、社会保険料に影響する場合もあります。一時金と年金のどちらが有利かは、金額・受け取る時期・他の収入・その間の運用など複数の条件で変わるため、当サイトでは有利不利の判断は示していません。
このツールの結果どおりの税額になりますか?
なるとは限りません。当サイトは公表されている一般的な計算式にそって概算を出す道具であり、税務相談を行うものではありません。勤続期間や加入者期間の実際の範囲、退職金規程での通算の有無、同じ年に複数の受け取りがあるかどうかによって結果は変わります。また当サイトは期間を月単位で扱っており、日単位の差は反映していません。税額を確定できるのは、勤務先や運営管理機関が交付する源泉徴収票です。判断が必要な場面では所轄の税務署または税理士にご確認ください。
ここに書いた内容は制度の一般的な説明です。実際の勤続期間・加入者期間の範囲や、 勤務先の退職金規程での通算の有無によって結果は変わります。 当サイトは税務相談を行うものではありません。判断に迷うときは 所轄の税務署 または税理士にご相談ください。