退職金の税金のよくある質問
退職金の手取りをめぐって実際によく出る疑問を、国税庁タックスアンサーと 東京都主税局の記載を根拠にまとめました(2026年8月18日確認)。
退職金からは、どれくらい税金が引かれますか?
勤続年数が長いほど、ほとんど引かれません。退職金には勤続年数に応じた「退職所得控除」があり、勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超える分は1年あたり70万円が退職金から差し引かれます。勤続30年なら1,500万円、勤続38年なら2,060万円までは非課税です。さらに控除しきれなかった部分も原則2分の1にしてから課税されるため、実効税率は数%に収まることが多くなります。たとえば勤続30年で退職金2,000万円なら、所得税155,702円+住民税250,000円の合計405,702円、手取りは19,594,298円で、引かれるのは約2%です。
退職所得控除はいくらですか?計算式を教えてください。
勤続年数(A)が20年以下なら「40万円 × A」(80万円に満たない場合は80万円)、20年を超えるなら「800万円 + 70万円 ×(A − 20年)」です(国税庁 No.1420)。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、これに100万円が加算されます。勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年に切り上げます。つまり勤続10年2か月の人は11年として計算し、控除額は40万円×11年=440万円になります。
退職日が1日違うだけで、税金は変わりますか?
変わることがあります。勤続年数の1年未満の端数は「1日でも1年に切り上げ」るため、たとえば勤続がちょうど20年0か月の人と、20年と1日の人では、後者が21年として扱われます。勤続20年の控除額は800万円、21年なら800万円+70万円=870万円で、控除が70万円増えます。控除が70万円増えると課税退職所得金額は35万円減り、税率10%の帯なら所得税・住民税あわせて7万円前後変わる計算です。退職日を自分で選べる状況なら、勤続年数の区切りを1日でも超えられるかを確認する価値があります。
「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなりますか?
退職所得控除も2分の1計算も一切使われず、退職金の支給額そのものに20.42%を掛けた所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます(国税庁 No.1420)。たとえば勤続30年・退職金2,000万円なら、本来155,702円で済む所得税が408万4,000円引かれます。差額は自分で確定申告をすれば還付されますが、申告しなければ戻ってきません。申告書は勤務先に提出する紙1枚で、退職金の支払いを受けるときまでに出します。税務署へ持っていくものではなく、会社が保管します。
勤続5年以下だと不利になると聞きました。本当ですか?
本当です。勤続年数が5年以下の場合、「退職金 − 退職所得控除額」のうち300万円を超える部分には2分の1にする計算が使えません(短期退職手当等・令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等から適用)。さらに役員等としての勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金(特定役員退職手当等)は、300万円以下の部分も含めて2分の1計算が一切ありません。たとえば勤続3年・退職金800万円なら、一般の従業員(短期退職手当等)で課税退職所得金額530万円、役員等なら680万円となり、税額に大きな差が出ます。
退職金の住民税は、あとから納付書が届くのですか?
届きません。退職所得にかかる住民税は他の所得と分離して課税され、退職金が支払われるときに所得税と一緒に特別徴収されます(東京都主税局)。つまり退職金の振込額は、すでに住民税を引いたあとの金額です。翌年に改めて請求されることはありません。税率は市区町村民税6%+道府県民税4%の合計10%(標準税率)で、課税退職所得金額に掛けて計算します。なお、退職所得に係る住民税の10%税額控除は平成25年1月1日以降に支払われる退職手当等から廃止されています。
退職金にかかる住民税は、住んでいる市区町村によって変わりますか?
原則として変わりません。退職所得にかかる住民税の所得割は地方税法の標準税率(市区町村民税6%・道府県民税4%)で計算されるため、全国どこでも同じです。ただし、独自に超過課税を行っている自治体では所得割の税率が標準税率と異なる場合があります。金額が大きく判断に影響する場合は、退職時点でお住まいの市区町村の税務担当課に確認してください。当サイトの計算は標準税率10%で行っています。
退職金は確定申告が必要ですか?
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、支払いのときに所得税・復興特別所得税と住民税が精算されるため、原則として確定申告は不要です(国税庁 No.1420)。ただし、申告書を出していない場合は20.42%の源泉徴収を精算するために確定申告が必要です。また、医療費控除や寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、その申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。年の途中で退職して給与所得の年末調整を受けていない場合も、確定申告をすると税金が戻ることがあります。
前の会社でも退職金をもらっています。控除額は変わりますか?
変わることがあります。前に受け取った退職手当等と勤続期間が重なっている場合は、その重複期間分の控除額を差し引いた残りが今回の退職所得控除額になります(所得税法施行令第70条第1項第2号)。さかのぼる期間は受け取る順番で変わり、退職金どうしなら前年以前4年内、令和8年1月1日以後に確定拠出年金の一時金を受け取ってから退職金を受け取る場合は前年以前9年内、退職金を受け取ってから確定拠出年金の一時金を受け取る場合は前年以前19年内です。この計算は「退職所得控除の重複判定」ページで行えます。トップページのシミュレーターは重複がない前提で計算しているため、該当する方はそちらをお使いください。
退職金とiDeCo・企業型DCの一時金を両方受け取ります。何年あければ損をしませんか?
受け取る順番によって必要な間隔が変わります。確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の一時金を先に受け取り、そのあと会社の退職金を受け取る場合は「前年以前9年内」が判定の対象なので10年以上、会社の退職金を先に受け取ってから確定拠出年金の一時金を受け取る場合は「前年以前19年内」なので20年以上になります(所得税法施行令第70条第1項第2号ロ・ハ)。9年内のほうは令和8年1月1日以後に支払を受けた一時金から適用されたもので、それ以前は4年内でした。「iDeCoは5年空ければよい」という古い説明はこの旧法の側の記述です。ただし控除が減るのは勤続期間と加入者期間が重なっている部分だけなので、まず重なりの有無を確認してください。
退職金を年金形式で受け取ると、税金はどうなりますか?
退職所得ではなく雑所得(公的年金等)として扱われ、他の所得と合算して総合課税されます。退職所得控除は使えず、代わりに公的年金等控除が適用されます。一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合では税負担も社会保険料への影響も変わるため、金額だけで決めずに受け取り時期や他の収入との兼ね合いも含めて検討する必要があります。当サイトのシミュレーターは一時金で受け取る場合を前提としています。
退職金の額そのものは、どこで確認できますか?
勤務先の退職金規程(退職手当規程)が唯一の根拠です。就業規則と一緒に備え付けられているのが一般的で、勤続年数と退職事由(自己都合・会社都合など)に応じた支給率の表が載っています。自己都合退職では支給率が下がる規程が多いため、同じ勤続年数でも金額が変わります。当サイトは「退職金の額が分かっている人が、そこから税金を引いていくら残るかを知る」ためのツールなので、金額そのものは規程か勤務先の担当部署でご確認ください。
このシミュレーターの金額は、実際の振込額と同じですか?
同じとは限りません。当サイトの計算は「退職金は一時金で1か所からのみ受け取る」「前に受け取った退職金と勤続期間が重ならない」「住民税は標準税率」という前提を置いた概算です。同じ年に2か所以上から退職手当等を受け取る場合、確定給付企業年金で本人負担の掛金がある場合などは計算が変わります。最終的な税額は勤務先が作成する「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」でご確認ください。
ここに載っている数字はいつの制度のものですか?
国税庁タックスアンサー No.1420(退職金を受け取ったとき)、No.2732(退職手当等に対する源泉徴収)、No.2260(所得税の税率)および東京都主税局「個人住民税」のページを一次出典としています。勤続期間の重複については、これに加えて所得税法第30条、同法施行令第69条・第70条・第72条の条文本文をe-Gov法令APIから取得して突き合わせています。いずれも2026年8月18日にHTTP 200で内容を確認しました。所得税の速算表は「令和7年4月1日現在法令等」の版です。各ページのURLと確認日は「計算方法と根拠」ページに掲載しています。
ここに書いた内容は制度の一般的な説明です。前に受け取った退職金と勤続期間が重なる 場合など、個別の事情によって税額は変わります。当サイトは税務相談を行うもの ではありません。判断に迷うときは 所轄の税務署 または税理士にご相談ください。